ヘッジファンド


                      
 ■ヘッジファンド

 ヘッジ・ファンドとは特定の顧客から巨額の資金を募り、伝統的方法による資産運用だけでなく、信用取引やデリバ
ティブ取引など、絶対的なリターンを求めようとする投機性の高い取引を行うファンドのことをいいます。
一般的に、ファンド・マネジャー自らが資金を投じていることが、通常の投資銀行との大きな相違点です。

 ヘッジファンドは、株、債券、為替、商品、不動産、デリバティブなど市場性のある金融商品などの相場動向を他社に
先駆けて察知して大量の資金を投下し、予測した相場動向が訪れればその先の相場動向を読んで再投資する投機筋
のファンドのことを指します。ハイリターンを短期間で稼ぐために、ITシステムや政治ネットワークを駆使してリスクを最小
化することに腐心しているといわれます。その豊富な資金量と短期的な投資行動から、相場形成に非常に大きな影響
力を与えており、当初は、相場下落リスクを空売りなどの手法でヘッジ(危険回避)することを狙いとしたため、ヘッジ
ファンドと呼ばれています。


 ヘッジファンドは米国で生まれた私的な投資組合(特定・少数の投資家や金融機関などから出資を受ける)の一種
で規制の及ばない租税回避地域(ケイマン諸島やブリティッシュバージン諸島等のいわゆるオフショア地域)に設立
する投資会社も多くあります。


ジョージ・ソロス氏が率いるクォンタム・ファンド(各国の金利・通貨政策の歪みを狙って大きな資金を動かす「マクロ・
ファンド」)が有名で、極めて投機的なファンドと思われがちです。 しかし、「へッジ(リスク回避)」という名前が示す通
りリスクをコントロールする様々なタイプがあります。


 投資内容などの情報開示義務がないため、公式な統計がなく実態が明らかにされていませんが、ファンド数は6000
〜7000、純資産規模は4,000億ドルをゆうに超えていると推計されています。 融資やデリバティブ(先物、オプション
スワップなどの金融派生商品)などを活用しているため、実際の取引規模は純資産をはるかに上回っているとされて
います。


 1998年に実質破綻したLTCM社の運用資産は異例の規模で、ピーク時には純資産の26倍の1,250億ドルに達し
更にその10倍のデリバティブ取引の契約残高があったといわれています。 そのため、予想外の相場変動になった時
には巨額の損失を被ることになります。

当時、ヘッジファンドの巨額損失に伴う破綻は、国際的な金融不安につながるとの懸念から、ニューヨーク連銀の
仲介でLTCM社が救済(9月23日、欧米金融機関14社が36億ドル出資)されたことは、巨額な資金を動かすヘッジ
ファンドの破綻は、一瞬にして世界的な金融不安を引き起こす危険性があることを表したものであるといえます。

 最近の例としましては、2007年8月米国でサブプライム問題が表面化し、世界の主要マーケットの株が急落すると
いう事態が起こりました。その影響がヨーロッパにも波及し、サブプライム問題による国際的な市場混乱を回避する
ためFRBが即座に公定歩合を0.5%引き下げ、さらに9月には政策金利を0.5%引下げと、金融政策面からマーケット
の安定化を図りました。 
サブプライム問題ではヘッジファンドも大きな損失を抱えていると言われており、危機を乗り越えることが出来なけ
れば清算に追い込まれるヘッジファンドも多数出るのではないかと言われています。 米国財務省もサブプライム
問題の深刻さを認識しており、問題の解決は長期化するという見方が多くなっています。




■投資手法
ヘッジファンドの採用する投資戦略は多岐に渡りますが、よく知られるものとして以下の戦略があります。

◆ロング・ショート (現在のヘッジファンドで、もっとも運用残高の多い投資戦略、ロング(買い持ち)と
             ショート(売り持ち)の双方のポジションを同時に取るものです)

◆アービトラージ (最もよく知られているのが裁定取引)
◆マーケット・タイミング (ロング・オンリー運用と異なり、ロング(買い)ポジションに入るタイミングを見計らい
                 ながら、それまでは主に現金や短期金融資産等で安全運用を行う戦略)

◆レラティブ・バリュー (裁定取引(アービトラージ)と混同して議論されることが多いが、レラティブバリューは
                広義では相対的な割安・割高を収益機会と捉える手法)

◆イベント・ドリブン (主に企業の買収・合併等のイベント発生時における市場でのミスプライスを収益機会と
             捉える手法)
◆マーケット・ニュートラル (その名の通り市場に対して中立なポジションを取る運用手法)
◆グローバル・マクロ (特定の運用手法を指すものではなく、多種多様な市場において多種多様な資産を多種
               多様な手法で運用するファンドの総称。世界のマクロ経済動向見通しをベースにした
               トップダウンアプローチに基づき、世界各市場で多種多様なポジションを張っている。
               有名なものではジョージ・ソロスのクオンタムファンド等がこの分類に入る。

◆ マネージド・フューチャーズ(主に商品先物に投資する運用手法)
◆プライベート・エクイティ(未上場企業に投資するベンチャー・キャピタルや、企業の買収〜再生〜売却を
                 通じて収益を上げるバイアウト・ファンド等の総称。一投資家に過ぎない一般的な
                 株式投資と異なり、大株主として企業の経営に対しより直接的な関与をしながら
                 最終的にIPO等を目指す。その特性から、中長期的な投資が多く流動性も低い
                 投資手法である)

 一般の投資信託は空売りが出来ないため、下げ相場では買持ちしている資産の価値が低下し、運用利回り
がマイナスとなる場合が多くなりますが、空売りを積極的に利用できるヘッジファンドの場合は、上げ相場でも
下げ相場でも利益を上げる機会があり、実際に下げ相場を得意とするヘッジファンドもあります。


 ヘッジファンドについては、ERM危機(1992)、アジア通貨危機(1997)等の大きなショックが起こった時期や
LTCM危機時(1998)には、ヘッジファンドが市場に与えた影響などに対し、国際的に懸念が高まることとなりま
した。しかし実際のデータからは、1994年以降ヘッジファンド市場から大幅な資金流出がみられたケースは少
なく、幾度のショックにもかかわらずヘッジファンド市場は拡大を続け今日に至っています。特に2000年以降は
世界的に株価が低迷するなか、安定したリターンを達成していたヘッジファンドに、従来の個人富裕層のみな
らず、機関投資家からの資金が流入拡大しています。

運用哲学
 ヘッジファンドは、既に内外の株式・債券といった伝統的資産に国際分散投資をしている機関投資家や個人
富裕層に対して絶対収益を提供し、また分散投資効果を向上させるためのオルタナティブ投資として利用され
ています。
ヘッジファンドは金融市場全体の動き(ベンチマークの動向)とは独立した絶対収益を目標としていることから
リターンの源泉は運用戦略を担っている個々のマネージャーのスキルに依存するところが大きいといえます。
一方、投資信託は市場ベンチマーク(β)を基準とした運用であり、リターンの源泉はベンチマークの上昇に
依存する傾向が強い。限られた資産でベンチマークを基準とした運用をするためのポートフォリオを構築する
ことにも一定のスキルを必要としますが、高水準の超過収益を狙うという意味において、相対的にマネージャー
の運用スキルに対する依存度は低いといえます。ヘッジファンドであればベンチマークの動向にかかわらず
損失が発生すればマイナスと評価されます。

■清算リスク
 ヘッジファンドは、ファンド数でみて1年間で5%以上のファンド(単独ファンド)が清算されているといわれて
います。背景としては、ヘッジファンド市場に多くの資金が流入し、収益機会が減少するなかファンド数が急増
することで、マネージャーの平均的な質が低下していること、収益機会の減少に伴って競争が激化した結果
優勝劣敗が速やかに決する傾向が強くなっていることなどが挙げられています。また規制が緩く運用の自由
度が高い反面、ヘッジファンドによっては流動性の低い資産に集中投資を行ったり、過大にレバレッジを効か
せたり、リスク管理が不十分であるケースも指摘されています。


 市場規模が拡大するなか、ヘッジファンドの金融市場や市場参加者に与える影響がかなり大きくなっている
ため、ヘッジファンドの活動実態を把握しようという取組みが中央銀行を含む世界の金融当局の間で進んでい
ます。中央銀行においてはグローバルな金融市場動向をモニタリングする上で、ヘッジファンドの投資手法の
進歩や投資対象となる市場をタイムリーに把握することが不可欠となっているといわれ、既に規制等の枠組み
が確立されている投資信託と対比することにより、ヘッジファンドの特性を明らかにしようとする取り組みが行わ
れています。






                                 
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